孤独なグルメ割り人形 鯵の味醂干しフライ編

「これは鯵の味醂干しのフライです」
そんな馬鹿なと耳を疑ってしまった。

何気なく買おうと思ったお弁当。
おかずで入っているこのフライはアジフライかな？イワシフライかな？イワシフライだったらちょっと嬉しいなあ、程度のノリでおばちゃんに聞いたらこのザマだ。

「どうされますか？」とおばちゃんは続けた。何フライですか？と聞いて絶句してしまった俺を不審に思ったのであろう。
こいつ買う気あるのか？と。

「か、買います」
そう答えるのが精一杯だった。
おばちゃんの顔もまともに見られず千円札を出した。

鯵の味醂干しのフライ。
分解するとアジフライと味醂干しになるのだろうか。いや、鯵の味醂干しとフライか。
いずれにせよ、突飛な組み合わせではないという事はわかる。
どちらも知っている食べ物の組み合わせだ。

そういうのもあるのか！

一口齧ると想像通りの味がした。
ああ、これはまさしく鯵の味醂干しのフライだと思った。
何もかけなくても、味醂干しの味がするので美味しい。そして食感はアジフライ。
組み合わせに囚われてどぎまぎしていた自分が馬鹿みたいだと思った。フライにしてやろうか、5分前の自分。

美味しく弁当を食べ終えた。
俺は満足していた。
つけあわせのサラダが入った紙カップの下に、ソースの小袋を見つけるまでは。

ソースは無いわ～。

*****
喫煙所で、タバコを吸う時の音がうるさい人を見かけた。
シー、ハー、シー、ハー
スーーー…
ハシー

午後もがんばろう。